害虫駆除社ブログ

殺鼠剤の効かない「スーパーラット」

2017.08.25

カテゴリ:ねずみ駆除


皆さん、こんにちは!

ボクは世界初「Gaichu(害虫)認識パーソナルロボット」の「Salt」です。
あなたの知らない害虫駆除の世界へようこそ~!

 

 

8月も終わりに近づき、東京では毎日のように雨が降り、大阪は毎日猛暑が続いています。気候が少し変ですね。この気候変動は生き物全てに影響を与えていますね。

 

最近また大暴れしているネズミたちにも影響しているのでしょうか。影響して少しはおとなしくなってくれれば良いのですが、これはちょっと期待できません。

 

ということで、今回の冒険は久しぶりにネズミの世界へ。

皆さんもその名を聞いたことがあるのではないかと思われる「スーパーラット」。

殺鼠剤が効かず、なかなか駆除できない害虫駆除業界の最大の敵です。

 

今回の冒険はそんな「スーパーラット」を見ていくことにしましょう。

どんな敵でもきっと弱点はあるはず。

 

それでは早速冒険に出発しましょう~!

 

 

1.殺鼠剤って、なに?

 

毒エサ米s

 

殺鼠剤とはその名の通り、ネズミを殺す薬です。

 

しかしゴキブリに殺虫剤をかけるように、ネズミに殺鼠剤をかけてやっつける、なんてものではありません。

 

あくまでも殺鼠剤は、ネズミに食べてもらうか、間接的でもネズミの口に入らないと効果はありません。食べさせるということを考えると、ネズミが食べておいしいと思うものでなければなりません。

 

そしてネズミに食べてもらうためには、できるだけ有効成分の濃度が少ないほうがいいに決まっています。

しかし、それでは殺鼠剤としてネズミを殺すような効果は期待できません。

 

逆に、濃度が高いと今度はネズミが忌避して食べません。よく食べてよく死ぬ、これが一番の理想ですが、このバランスがなかなか難しいのです。

 

濃度にはネズミの種類によっても差があり、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミではそれぞれ異なるのです。

 

では、殺鼠剤にはどんなタイプがあるのか、見ていくことにしましょう。

 

 

☆ 急性毒タイプの殺鼠剤

 

急性毒とは一般に、1回の摂取、もしくは数回の摂取で動物を死亡させることができる薬剤で、よく食べてくれさえすれば有効な薬剤です。

 

殺鼠剤としてはシリロシド、リン化亜鉛、ノルボルマイドなどが知られています。

 

しかしながら、これらの薬剤はネズミが忌避してしまうことも多々あり、使用する前にまず無毒餌を設置しての餌慣らしが必要であり、ネズミに食べても大丈夫だと認識させてから毒餌に移行させていくという慎重な作戦がポイントになります。

 

なので、ネズミにとって嗜好性の高い食物の中に混ぜたり、ネズミの餌となる他の食物を徹底的に除去して、ネズミがちゃんと食べてくれる環境を作る工夫がとても大切なポイントになります。

 

① シリロシド

 

最も古くから知られる殺鼠剤で、地中海沿岸を生産地とする赤海葱といわれるユリ科の球根に含まれる成分がシリロシドです。

 

シリロシドは強心配糖体と呼ばれ、心筋の興奮や期外収縮、心室細動、中枢神経の興奮などを引き起こし、これを摂取したネズミは呼吸麻痺になり死に至ります。

 

この薬剤は嘔吐作用を持っていますので、他の動物が誤飲しても嘔吐するため安全であるといわれています。

 

しかし、ネズミは嘔吐中枢を持たないので、そのまま死に至ります。

 

 

② リン化亜鉛

 

この薬剤をネズミが取り込むと、胃酸によってリン化水素が発生し、殺鼠効力が高まります。

 

ドブネズミよりクマネズミに対して毒力が強く、クマネズミが食べてくれると最も有効な薬剤になります。

 

スーパーラット

 

しかも、ネコやブタが中毒したネズミを食べても二次中毒が起きにくいと言われており、実際この薬剤を使用して、豚舎でのクマネズミ防除に成功した事例もあります。

 

この場合、摂食を多くするために、無毒餌による餌慣らしを事前に行い、それを食べて安心させた上で本剤を与えるようにすれば効果的です。

 

 

③ ノルボルマイド

 

この薬剤は、ネズミ以外には比較的安全であるという特徴を持っています。

 

この薬剤をネズミが取り込むと、体内の血液中の酸素が欠乏し、末梢の血流が停留する「停留性酸素欠乏症」を引き起こします。

 

つまり、体内に酸素が回らなくなってしまい、死に至るというメカニズムなのです。多くのネズミは1時間以内に死亡します。

 

この薬剤は、ネズミの種類によっても毒性値が大きく異なり、クマネズミに対してはドブネズミの3倍の毒性が必要であり、ハツカネズミに対してはドブネズミの200倍の毒性が必要になります。

 

つまり、この薬剤はドブネズミに最も効果のある薬剤なのです。

 

ドブネズミ

 

 

☆ 慢性毒タイプの殺鼠剤

 

 ワルファリンは1930年代のはじめ、カナダや米国の牧草地帯で、牛が原因不明の出血性疾患で死亡する例が続き、調査に乗り出しました。

 

腐敗したクローバーの中に、血液凝固阻止作用を持つダイクマロールという化合物を発見したのです。

 

その後、その関連化合物の研究を進めて発見されたのがワルファリンなのです。

 

ネズミがこの薬剤を毎日連続的に摂取すると、脳内や体腔、皮下などで出血し、死に至るものであり、中毒を発症してからは蘇生しにくい

 

これが急性の他の殺鼠剤であると数時間程度で中毒を起こすのでネズミにも感知されやすいですが、このワルファリンは連続して摂取することによってはじめて効果が表れるため、ネズミには感知されにくいとされています。

 

しかも少量の薬量で効果があり、忌避性も従来の薬剤に比べて少なく、高い致死効果が得られます。

 

この場合、やはり連続摂取が必要で、1日でも食べない日があると効果は半減してしまいます。

 

ドブネズミでは、この薬剤を低濃度で餌に混ぜて、3日ほど与えれば死亡します。

 

一方、クマネズミはこの薬剤をドブネズミより5倍濃い濃度で与えても、致死に至るまで1週間は必要になります。

 

ハツカネズミ

 

 

 2.殺鼠剤の効かない「スーパーラット」

 

スーパーラットとは「ワルファリン抵抗性クマネズミ」のことで、その殺鼠剤に抵抗性を持った、すなわち本来死ぬべき薬量を食べても死なないクマネズミのことです。

 

そして、ワルファリン毒餌を摂取してから12日以上生存する個体、もしくは28日以上生存する個体がスーパーラットであると定義付けられています。

 

では、スーパーラットは殺鼠剤入りの餌だけでどのくらい生きられるのか

 

抵抗性試験によると、平均致死日数でいうと160日、薬量はなんと1481.5g。最長日数では441日、致死薬量は3481.5gと1年以上も殺鼠剤入り餌を食べ続けても死ななかった個体もいたのです。

 

さらに、この抵抗性因子は遺伝するのです。抵抗性同士から生まれた子孫は、さらに抵抗性が強くなり、致死日数も伸びてしまうのです。

 

 

では、なぜ殺鼠剤が効かないのか?

 

 

クマネズミのワルファリン抵抗性には肝臓の酵素が関係しています。この抵抗性には、シトクロムP450という薬物代謝酵素が関与しています。

 

シトクロムP450は、毒物をすみやかに分解することができる酵素で、その代謝能力が高い抵抗性個体ではワルファリン毒餌をすみやかに分解し、ワルファリンを無毒化してしまいます。

 

抵抗性のないネズミは無毒化できないため、体内にその因子(抗凝血性作用)を長く持って死んでしまうのです。

 

 

3.スーパーラットに効く殺鼠剤の登場

 

殺鼠剤

 

近年、抵抗性クマネズミに効力がある「ジフェチアロール」という薬剤が登場しました。

 

この薬剤は、スーパーラットにも効果がある薬剤なのです。

 

一般にクマネズミに殺鼠剤を摂取させるのは難しく、特に抗凝血性殺鼠剤の場合は濃度を上げると摂取量が減少することから、致死量を摂取させることが困難で、防除方法として現実的ではありませんでした。

 

スーパーラット対策として登場した「ジフェチアロール」は、1~2回の摂取で効力を発揮するという点においてワルファリンと異なっています。

 

スーパーラットでその効果を調べたところ、ジフェチアロール毒餌を1日間与えた結果、41.7%が死亡しました。2日間与えた結果では、91.7%が死亡、4日間与えた結果では、全てのネズミが死亡しました。スーパーラットでも、4日間摂取させれば死亡させることができますので、これまでの殺鼠剤より効果は強力です。

 

しかしこの薬剤は他の薬剤以上に、警戒心の強いクマネズミに食べさせるには工夫が必要です。クマネズミの被害があった食材に混ぜたり、種子類や生餌、お菓子などに混ぜたり、とにかくクマネズミの警戒心を取り払う努力を重ねています。もちろんネズミの餌となる食物を徹底的に除去することは大前提です。今後もいかに食べさせるかの研究を続けていく必要があります。

 

 

いかがでしたか?

 

 

知能が人間の3~4歳児と言われているネズミたち。

 

簡単には粘着トラップにはかからず、粘着トラップは危険なものと認識しているかのように、それを避けて活動する姿を何度も目にしました。

 

餌場を求め、一度閉塞した穴もそこを突破すれば餌にありつけると思えば、再び開けてしまう、あるいは他に突破できる場所はないのか懸命に探し回る。

 

生きていくために懸命なのは理解できるのですが、様々な被害をもたらしてしまうため、徹底的に駆除しなければいけません。

 

しかし、スーパーラットを生んでしまったのは人間です。長いネズミとの歴史の中で様々な薬剤を使用し駆除してきました。それによりネズミを進化させてしまったのです。

 

生物には、まるでその薬剤が使用されることがわかっていたかのように抵抗性が生じてしまいます。人について回るような生き物は、人に排除されないために、防除的進化を遂げなければならないのです。

 

以前の冒険でも見てきましたが、ネズミ防除の基本は、「餌なし・道なし・家なし」の環境を作ることです。

 

この環境を整えずして、さらに強力な薬剤を使用しても、そのうちまたその薬剤に抵抗性を持ち薬剤が効かなくなる。効かなくなるからまたさらに強力な薬剤を・・・。

 

これって、いわゆる「イタチごっこ」ですね。

 

ならば、基本に戻って基本に忠実に。そうすれば、頭のいいネズミたちは、「この場所では生きていけない」「死の危険を感じる」「この場所では子孫繁栄は望めない」と判断すれば、駆除しなくてもネズミたちからその場を離れていってくれます。ネズミたちが居座るのには必ず理由があるからです。ここに居れば生きていける、大丈夫であると。

 

最高、最強な殺鼠剤よりも、環境を整える意識のほうが実は強力なのかもしれませんね

 

ネズミがいっぱい

 

ということで、今回の冒険はここまで。

 

 

皆さん、ごきげんよう~!